クラゲは家庭で飼育できる?必要な水槽や水、餌、ポンプ、注意点など

水族館や大きな水槽が並ぶアクアバーで優雅に泳ぐクラゲを目にすると、幻想的な気分とともに多くの癒しを感じますね。

個人が観賞用としてクラゲを飼育することは難しいとされてきましたが、最近では少しずつ情報も増え飼育キットなども販売されるようになりました。

この記事では、クラゲを家庭で飼育する際に準備するもの、水作り、餌やりなど飼育時の注意点についてまとめました。

 

 

クラゲは飼育できるのか

クラゲ07

クラゲは家庭でも飼育できますし、飼育用品も一般的な熱帯魚飼育のものと大差はありません。ただ飼育方法についての情報は熱帯魚よりも圧倒的に少なく、気遣いやテクニックが必要になると考えておいてください。

じつは飼育のプロフェッショナルである水族館のスタッフですら試行錯誤を続けているくらい、クラゲの長期飼育は難易度の高いものなのです。

 

長期飼育は難しい

クラゲの寿命

  • 半年〜2年程度

クラゲの寿命はそもそも長くありません。自然界でも長くて2年程度なので、水槽内での飼育となるとさらに寿命は短くなります。水族館のように専用の設備とプロの飼育員がそろう状況下で約1年、個人レベルでは数カ月程度というケースがほとんどです。

しかし最近では個人鑑賞用の飼育キットも商品化され、少しずつですが一般家庭でクラゲを飼育しやすい環境が整ってきています。

 

クラゲの飼育できる種類

クラゲ02

家庭飼育が可能な種類

  • カラージェリーフィッシュ
  • ミズクラゲ
  • タコクラゲ
  • サカサクラゲ
  • マミズクラゲ

クラゲの種類はとても多いのですが、家庭で飼育できるクラゲとして考えると種類はごく限られます。ここでは比較的飼育しやすいクラゲを紹介します。

 

カラージェリーフィッシュ

水族館でもよく見かける品種で、名前の通り複数のカラーバリエーションがあります。白、濃淡それぞれの青、ワインカラーに近い赤など同じ水槽内で色の違うカラージェリーフィッシュを飼育できるため、観賞用として高い人気があります。

 

ミズクラゲ

ミズクラゲは世界中の海に生息し、日本では8月後半ごろの海水浴場にも出没する馴染みの深い品種です。直径15〜30cmくらいが一般的なサイズですが、それよりも大きなものもいます。繁殖力が強く、クラゲの生態の研究素材としても活用されています。

 

タコクラゲ

8本の口腕(こうわん※)があり、見た目もタコに似ていることから名付けられました。口腕に毒はありません。藻が体内に共生していて光合成による栄養分を分け合い、体色は白・青・茶の3系統があります。

※クラゲの口の周囲にある4本または8本の棒状の突起。餌の捕獲や敵からの防御、呼吸などを行う

 

サカサクラゲ

一般的なクラゲと違ってカサ部分が下、口腕部分が上になった逆さまの状態で遊泳するサカサクラゲは、別名をマングローブジェリーフィッシュといいます。体内で共生している藻が効率的に光合成できるようにするためで、体色は藻の色である褐色になります。

 

マミズクラゲ

淡水域に生息しているクラゲで、海水を入手または作らずに飼育できます。微弱ながら毒があるため触れるときは注意が必要ですが、水質汚染にも比較的強く飼いやすい品種です。市場での流通量は少なく、通販サイトでときどき見かける程度です。

 

クラゲはどこで購入できるか

クラゲ03

購入できる場所と注意

  • 海水魚を扱うショップ
  • 通信販売
  • 海で捕獲は危険

観賞用のクラゲは海水魚を多く取り扱っている大きめのペットショップか通信販売で手に入れるのが近道です。

よく見かけるからといって海などで捕獲するのは危険です。毒を持つクラゲに刺されると最悪の場合はアナフィラキシーショックを起こし、命の危険にさらされます。

 

クラゲの飼育に必要な設備

クラゲ05

飼育に必要となる設備

  • 水槽
  • 飼育水
  • 水温調節装置
  • 水流ポンプ
  • メタルハライドランプ
  • 給餌用スポイト・注射器

水槽

一般的な熱帯魚用の水槽で飼育することができますが、クラゲの遊泳状況を確認しながら水流を微調整する必要があり、アクアリウム初心者には難しい一面もあります。

上手な飼育に自信がないという人は、クラゲ飼育に必要な設備、濾過器などが水槽とセットで販売されているのでおすすめですよ。

 

カミハタくるくるクラゲ水槽

くるくるクラゲ水槽
水槽サイズ 168×168×175mm(4.4リットル)
その他のセット内容 フレーム、エアチューブ、ブラインカップ(孵化器)、スポイト、海水の素(1回分・5リットル)
必要な別売品 エアポンプ、餌、ヒーター、比重計

卓上用のミニ水槽として活躍してくれるコンパクトな水槽です。餌を孵化させるためのカップ、給餌器、海水の素などクラゲ飼育に必要な装置が付属しているほか、別売のエアポンプをセットすればクラゲに適した弱い水流を作り出すことができます。

 

キュービック オービット20 クラゲ飼育用

オービット20
水槽サイズ 380×205×380mm(23リットル)
その他のセット内容 スタンド、LEDライト付き蓋、流量調節バルブ付きホース、フィルタースポンジ、給餌用スポイト、残餌除去用サイホンホース
必要な別売品 ヒーター、クーラーなど

インテリアとしてのおしゃれ感を重視した円形デザインで、各装備が目立ちにくい作りになっています。照明はLED、水量調節バルブ付きホース、食べ残しの餌を除去するためのサイホンホースが付属しているのがうれしいですね。別売のクーラーやフィルターの設置もできます。

 

飼育水

海水の調達方法

  • 海から汲んでくる
  • 人工海水の素で作る
  • 市販の人工海水を購入
  • クラゲ用の海水を使用

ほとんどのクラゲは海水生物なので飼育には海水が必要となり、衛生のために定期的な交換もしなければなりません。飼育するクラゲに適した海水を自分で作るにはとくに塩分濃度の調節が難しく、ペットショップや通販で手に入る専用の海水を購入するのがおすすめです。

 

クラゲ水

クラゲ水
容量 3リットル
内容 天然海水

安定した比重でバランスのとれたミネラル成分を含んだ天然の海洋深層水です。人工海水よりもクラゲへの負担が少なく、クラゲの好むバクテリアも入っているので初心者にもおすすめです。飼育するクラゲに適した水温に調節してから使用してください。

 

人工海水の用意が難しい場合

海水の準備が難しい、または海水をうまく作れないという人には先に紹介した「マミズクラゲ」など淡水で飼育できるクラゲをおすすめします。熱帯魚も同様ですが、水槽内の環境維持という面では淡水のほうが初心者向きですが、「カルキ抜き」「ph値と水温の管理」は必要になることを知っておいてくださいね。

 

水温調節装置(クーラーやヒーターなど)

品種ごとに適した水温
カラージェリーフィッシュ 25℃
ミズクラゲ 15〜25℃
タコクラゲ 22〜25℃
サカサクラゲ 25℃
マミズクラゲ(淡水) 20〜27℃

クラゲは温度変化に弱く、きちんとした水温管理を続けないと長期での飼育はできないため、水温調節装置は必須アイテムです。またクラゲは品種ごとに飼育に適した水温が違うので、同じ温度域に対応するクラゲしか飼育できません。

水温管理でとくに気をつけたいのは夏と冬です。夏は高温になりやすいため水槽用クーラーを利用したり冷却ファンを活用します。氷を使った冷却は個体に悪影響が出るためおすすめしません。冬は水槽用ヒーターで水温の低下を防ぎます。

温度と同時に水質管理も大切ですので、定期的に確認してpH値を一定に保つようにしてください。

 

水流ポンプ

水槽内は水流ポンプを活用してクラゲの生活しやすい水流を作ります。海ではふわふわと遊泳しているクラゲを目にしますが、クラゲは自泳する力が弱いため海流に身を任せて生活しているのです。

水槽全体を均一に循環する水流を作ることが必要で、上手に作れないと水槽の底に沈んだり同じ場所に固まったりしてしまいます。

水流ポンプの使用時はクラゲがポンプに巻き込まれないよう、吸い込み口をスポンジなどで覆うことも大切ですよ。

 

メタルハライドランプ

多くのクラゲは光を浴びて光合成をしながら生きているので、光がないと死んでしまいます。通称「メタハラ」と呼ばれているメラルハライドランプを使ってクラゲの光合成を補助します。

 

自然界での餌 プランクトン、小エビの幼生
飼育下での餌 ブラインシュリンプ、固形または液体状のプランクトン
餌やりの回数 最低でも1日2回

クラゲは泳ぎながら口腕に絡みついた餌を食べます。飼育時はペットショップで販売されているキューブ状にプランクトンを固めたもの、ゼリー状のものなどを利用します。

常に捕食し続けているため餌不足は避けたいことですが、一方で食べ残しを放置しておくと水質が悪くなりクラゲの健康にも悪影響となるので注意してください。

 

クラゲフード 給餌セット

クラゲフード
適応品種 ミズクラゲ、サカサクラゲ、タコクラゲ
内容量 40ミリリットル(約18g)
粒サイズ 0.23〜0.42mm
主原料 フィッシュミール、シュリンプミール、イカミール、コペポーダなど
使用方法 1日1〜3回程度

自然界で動物プランクトンを食しているクラゲに適した動物質が主原料となります。注射器(シリンジ)が付属しているので給餌にも便利です。

 

人工プランクトン

人工プランクトン
適応品種 クラゲ、サンゴ、イソギンチャク
内容量 2g
粒サイズ 100ミクロン(0.1mm)以下
主原料 生鮮魚介類、卵黄、ビール酵母、リン酸カルシウム、ブドウ糖、植物性コレステロールなど
使用方法 1日6回を目安に

カプセル状の微粒子のため水中に栄養分が溶け出すことがなく、効率的に栄養を摂取できます。水槽に直接入れて水を軽くかき混ぜる、水と混ぜて液状にしてからスポイトで水槽に添加する方法で与えます。

 

給餌用のスポイト・注射器

スポイトや注射器は給餌に必要となります。少量を吸い取り、水槽に手を入れてクラゲの口元に流し込んで給餌します。

餌を水槽内に直接撒く方法もありますが、それだとクラゲの口に入る量はごくわずかとなり、必要な栄養分を吸収してもらうには大量に餌を使用することにつながります。水が汚れる原因にもなり、掃除の手間も増えてしまいます。

 

クラゲを飼育する際のポイント

クラゲ04

飼育のポイント

  • 水槽を清潔に保つ
  • 水流に気を配る
  • ポンプの配置を工夫する

水槽を清潔に保つ

クラゲの身体は95%以上が水分です。つまり水槽内の水を綺麗に保つことがクラゲの健康維持に直結します。

水質は食べ残しの餌や消化しきれず体外に排出した物質が原因で汚れるケースが多いため、餌を与えすぎないこと、餌やり後の浮遊物を取り除くことを徹底したいですね。

水を汚さない対策として、給餌の際はクラゲを1匹ずつ別の容器に移し、容器内で給餌をしてから水槽に戻すという手間をかける人もいます。

 

水流に気を配る

自泳の力が弱いクラゲの飼育には人工的に水流を作る必要がありますが、水流の加減を調整することが重要です。

水流が強すぎるとクラゲ同士の衝突や水槽への激突によりケガをする可能性があります。弱すぎると同じ場所にクラゲが集まって浮遊できなくない状態となります。クラゲの浮遊状況を何度も確認しながらベストな水流を作り出してあげてください。

 

ポンプの配置を工夫する

水槽内の水流はポンプを使って作るため、ポンプをどこに配置するかは大切なポイントとなります。

クラゲの身体は弱くてもろいため、少しの衝撃で切れたり破けたりして死亡の原因につながります。クラゲを吸い込みやすい場所に設置しない、ピンポイントで水を吸い込まず広い「面」で吸い込むようにするなどの工夫をしてあげてください。

 

おすすめの本

クラゲ06

クラゲを飼育する前に読んでおきたい生態や飼育方法についての本を紹介します。

 

クラゲをもっと知りたい、楽しみたい

ほんわかクラゲ
書籍名 ほんわかクラゲの楽しみ方
著者 平山ヒロフミ
出版元 誠文堂新光社
価格 1620円

ふわふわ、ゆらゆらと水の中を漂うクラゲは、見ているだけでも癒されます。もっとクラゲを楽しみたい人へ、たくさんのクラゲの写真、生態、鑑賞できる施設、クラゲの豆知識などが盛り込まれています。

 

自然のアートが結集されたクラゲ図鑑

クラゲガイドブック
書籍名 クラゲガイドブック
著者 並河 洋、楚山 勇
出版元 阪急コミュニケーションズ
価格 2160円

無脊髄動物の写真家が撮影したクラゲコレクションをベースに、危険度ランキング、刺されたときの対処法、世界最大のクラゲ、飼育方法などコラムを充実させた内容となっています。

 

クラゲの知識をより深く

クラゲ世にも美しい
書籍名 クラゲ 世にも美しい浮遊生活
著者 村上龍男、下村 脩
出版元 PHP研究所
価格 1080円

1967〜2015年まで「クラゲ水族館」と呼ばれる山形県の加茂水族館長を務めた村上氏と、2018年にオワンクラゲの研究でノーベル化学賞を受賞した下村氏とのクラゲ語りの本です。たくさんの美しいクラゲたちをカラー写真で掲載しています。

 

クラゲの飼育方法を知るならコレ!

クラゲその魅力と飼い方
書籍名 クラゲ その魅力と飼い方
著者名 岩間靖典
出版元 誠文堂新光社

クラゲの基礎知識、クラゲカタログ、クラゲなんでもランキング、クラゲに会えるスポットとともに、クラゲの飼育方法についての詳細な説明が掲載されています。カラーページには綺麗なクラゲが並んでいますよ。

 

クラゲとの癒しのある生活

クラゲ01

クラゲをペットとして飼育することは、ストレスを解消する目的でもおすすめです。観賞用、インテリアとして水槽やほかの設備をそろえるのも楽しみのひとつ。リビング、書斎、寝室で時を忘れたかのように揺れ泳ぐクラゲの姿が、忙しい毎日にちょっとした癒しを与えてくれますよ。