「カラカル」という動物を見たことがありますか。まるで猫のような姿形をしていますが、特徴のある耳や鋭い目つきなど野生的な面もあります。
この記事ではカラカルの生態やペットとして飼えるのかについてまとめました。
カラカルとは

カラカルとは
- 猫ではなくネコ科動物
猫の種類は100種ほど登録されていますが、カラカルはそこには属しません。見た目で猫だと思われがちですが、生物学上の分類は「ネコ科動物」 とされます。
ネコ科動物は8系統に分かれており、カラカルは「カラカル系」に入ります。カラカル系にはサーバルキャット、アフリカゴールデンキャットなども含まれますよ。
ネコ科動物は、細くて長い脚をもちジャンプ力に優れています。
壁画にも描かれた神聖な動物
カラカルは古代エジプトの頃から存在したと考えられています。壁画や絵などに描かれていることからも、エジプトの人々の生活のなかで守り神として崇められていたといえます。
ネコ科動物は古くから神の化身のように信仰されやすい対象ですが、カラカルも神聖な動物だったのですね。
カラカルの特徴

分布
カラカルはアフリカ大陸(サハラ砂漠除く)、アフガニスタン、イラン、インド北西部、サウジアラビア、パキスタンなど、乾燥している草原や森林で姿を確認されています。
基本的に平地で暮らすことが多いですが、標高3000mもの高い山や岩場などでも発見されています。
しかしその数は、開発などが原因で年々減少しています。さらに夜行性で警戒心が強いことも相まって滅多に会うことができないことから「幻の猫」といわれていますよ。
形態
体長 | 55〜90cm |
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尾長 | 20〜30cm |
体重 | 8〜23cm |
体の大きさは、イエネコ(家の中で人と共に暮らす猫)の2〜4倍ほどで、長くほっそりした四肢をもっています。
個性的な耳

カラカルの耳は顔のわりに大きく、三角に尖る耳の先端にフサフサした黒い毛が生えています。これはカラカルの一番の特徴で見分けるポイントでもあります。
ちなみにカラカルとはトルコの言葉で「黒い毛」を意味します。
顔の黒い毛

カラカルは顔にも黒い毛が生えており、目の上には短い眉毛のような黒い部分が目立ちます。顔の黒い毛は、鼻の下周辺まで続いています。
体毛の色

体毛は赤茶や黄色っぽい茶色をしていて、お腹周辺は白い色をしています。全体的に薄い色なので、耳や目の周辺の黒色がアクセントになっています。
生態
カラカルは砂漠、草原、丘陵地に生息し、基本的に単独での行動を好みます。夜行性ですが昼に行動することもあります。また動きが俊敏で、ときには時速80キロで駆け抜けます。
大きな耳は獲物を捕獲するときに欠かせない部位で、獲物がどちらの方向に、どれくらいの距離にいるのかをキャッチします。チャンスを逃すことなく獲物を捕らえる頭脳派ともいえますね。
性格
警戒心が強い面がある一方で、ライオンに立ち向かうなど凶暴な一面もあります。ときにはハイエナやジャッカルなどから獲物を横取りする強さと俊敏さをもっています。
鳴き声
ガラガラしたダミ声ですが、一応ニャーと鳴きます。子どもは鳥のさえずりのようなピヤーというような鳴き声です。
餌
カラカルは肉食性で、鳥類、小動物、小型のレイヨウ(ウシ科の動物)、猿などを食べます。鳥類は地上から3mほどまでであればジャンプして捕らえることができます。
寿命
野生 | 12年程度 |
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飼育下 | 16〜20年程度 |
カラカルの寿命は、野生では12年程度、飼育下では16〜20年程度といわれています。
繁殖
繁殖には岩の隙間や樹洞、ツチブタやキツネが使っていた穴を利用します。繁殖期は9〜12月の間で妊娠期間は9週間ほど、2〜4子を産みますよ。
絶滅危惧種
今すぐ絶滅してしまうレベルではありませんが、野生で暮らすカラカルの数は、森林の減少により年々減っている傾向にあります。ワシントン条約で保護されているものの、個人レベルで意識し絶滅しないよう取り組んでいく必要がありますね。
カラカルはペットとして飼育できるのか

一見猫に見えるカラカルですが、荒々しいハンター気質を備えてるため野生を家で飼うのは難しいといえます。
ただし、赤ちゃんや子供から飼って人間に慣れさせれば可能で、インドやイランなどの地域ではカラカルをウサギ狩りや鳥の狩りのために飼っていたこともありますよ。
飼養許可が必要
許可取得に必要とされるもの
- 一定の基準を満たした「おり型施設」
- 脱走を防止できる構造・強度を確保
- 第三者との接触を防止する措置
- 特定動物を飼養している旨の標識を掲示
- マイクロチップ(個体識別)
- 輸送用のケージの準備
カラカルは特定動物(人に危害を加える恐れのある危険な動物)になっているため、購入する際は各都道府県において、飼養許可の取得が必要になります。
準備や手続きには最低でも一ヶ月以上はかかります。カラカルをはじめ特定動物の飼育許可申請は2万円ほどで、マイクロチップは7,000〜8,000円になります。
販売価格
価格
- 120〜200万円程度
カラカルの販売価格は120〜200万円程度です。ある程度育った5〜6ヶ月の幼体が手に入れやすいですが人に慣れた良い子であるとは限らないため、ある程度覚悟して予約する必要があります。
入手方法
カラカルは輸入動物を取り扱う販売店から購入できますが、入荷頭数が少ないため予約して入荷待ちをするのがほとんどです。
国内では「インナー・シティ・ズー ノア」「有限会社プラスト」のお店で輸入動物の取り扱いがあります。
飼育方法
カラカルはジャンプ力があり3mほどであれば乗り越えることができます。そのため飼育する際は、自宅の敷地から外に出ない対策が必要です。
またカラカルを遊ばせるため、吹き抜けのあるリビングなど通常の天井以上の高さがある場所を確保してください。ネコ科の動物は高さがないと運動不足でストレスを感じてしまうからです。
また、家具やドアなど危険のない環境づくりも重要となります。
餌
カラカルを個人で飼う場合は、生鶏肉や内蔵処理されたウズラの生肉(冷凍販売で1羽120〜150円程度) 、ヤマネコ用の缶詰(1缶397gで1,000円程度)を与える場合が多いです。
たんぱく質メインの質の良いキャットフードなどを併用することもできますが、通常の猫の3倍ほど食べるため、食事代は1ヶ月で3万円ほどかかります。健康を維持するためにも食事代にはしっかりお金をかけてあげてください。
病院やお手入れ
何か不調があったときのために、事前にカラカルを診療してくれる動物病院を探しておくと安心です。予防接種などはイエネコと同じ混合ワクチンを接種します。
またお手入れ用の爪切りやブラッシングなどは、通常の猫や犬のものを代用するようにしてください。
カラカルのいる動物園

国内でカラカルを飼育している動物園は、現在5施設あります。
羽村市動物公園 | 東京都羽村市羽4122番地 |
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大内山動物園 | 三重県度会郡大紀町大内山間弓530-4 |
東山動植物園 | 名古屋市千種区東山元町3-70 |
福山市立動物園 | 広島県福山市芦田町福田276番地の1 |
姫路市立動物園 | 兵庫県姫路市本町68 |
福山市立動物園では2014年に赤ちゃんが誕生していますが、他の動物園では寿命を迎えているケースもあるので、会いに行く前には問い合わせして確認するようにしてくださいね。
ふさふさした耳が凛々しいカラカル

カラカルの特徴についてまとめました。一見猫に見えるカラカルですが、特徴的な耳や顔つきに加え3メートル以上のジャンプ力など、とても勇ましく凛々しい雰囲気の動物でしたね。
個人で飼うのは価格的にも環境的にもハードルが高そうですが、日本ではいくつかの動物園でも会えるので、気になった方はぜひ足を運んでみてください。