犬がご飯食べない原因は病気?老犬の食欲不振の対策は?

犬 病気13
監修者:藤原 光宏
所属:ふじわら動物病院

病気だけをみるのではなく、動物の体の状態を総合的に考えて、動物の体に優しい治療を心掛け、現代医療、西洋医学のみならず、漢方薬や鍼灸治療などの東洋医学やホモトキシコロジー、オゾン療法なども取り入れた統合医療をおこなっています。 また、終末期医療、終末期ケアにも力を入れています。

いつも美味しそうにご飯を食べていたのに、「最近、愛犬がご飯を食べてくれない…」となると、飼い主さんは心配ですよね。

どうして食べてくれないの?
そういう時におすすめのフードは?
病院に連れて行った方がいい?

など、わからないことも多いと思います。

食欲不振の理由に病気が隠れていることもあります。愛犬の様子をしっかり観察して、何が原因なのか、どうすればいいのか、を判断できるようになっておきましょう。

この記事では、犬がご飯を食べない原因や食欲不振の対策をまとめました。参考にしてみてくださいね。

犬の食欲不振、原因は?

犬 病気

原因

運動不足
気温や環境の変化
食習慣
老化

食欲不振は特に病気ではなく、環境や食習慣を見直せば解決するケースがあります。

中でも、運動不足、気温や環境の変化、食習慣、老化、が原因となることが多いです。

運動不足が原因?

私たちもたくさん運動をした後はお腹が空きますよね。犬も同じです。

しかも、犬には「1日3食、食べないといけない」というような考えがなく、自分の消費カロリーなどを本能的に感じ取って必要な食事量を判断しています。

なので、いつもより運動量が減ると、消費カロリーが少なくなるため、食事量が減ります

もちろんそうではない犬種、性格の子もいて、出されれば出されただけ食べちゃうという子もいますが、そういう子も肥満予防のための運動が必要です。

気温や環境の変化

犬は変化が少なく規則正しい生活を好む動物です。季節が変わる時期の気温の変化や気圧の変化、温度の変化、引越しなどの環境の変化によって、ストレスを感じ、食欲不振になることがあります。

特に小型犬はストレスを感じやすいのでご注意ください。ストレスが原因の場合は、ストレスとなっている原因を取り除くことが大切です。

引越しなどの変化については少しずつ慣れていきますが、ストレスを発散しやすいようにしっかり散歩をしたり、お部屋でちゃんと遊んだりしてあげましょう

犬の食欲不振、食習慣が原因のことも?

食欲が落ちたら、食習慣もチェックしましょう。

犬が好まないフードを与えていたり、フードが酸化したりしていませんか?

酸化というのは、開封してから時間の経ったフードに起こる現象で、「腐る」とは少し異なりますが、酸素に触れて酸化することで栄養素が変化したり、味が落ちたりしてしまった状態です。

犬は鼻がきくので、酸化したフードは好まない傾向があります。もちろん、犬の健康にも良くないので、一度開封したフードは酸化する前に食べ切ることが理想です。目安として、開封から1ヶ月以内に食べきるといいでしょう。

他にも、人間の食べ物を与えたせいでドッグフードを食べなくなるということもあります。

人間のために調理されたものは、塩分などが多く含まれていて、犬には向いていません。犬に食べさせてはいけない食材が含まれている場合もありますので、ご自身のご飯の残りを食べさせることは、絶対に避けましょう。

犬に食べさせていい食材もありますが、そればかり与えていると必要な栄養素が足りなくなってしまうこともあるので、栄養バランスのいいドッグフードは欠かせませんよ。

老犬(シニア犬)の食欲不振はなぜ?対策は?

シニア犬になると、嗅覚や消化機能の衰えにより食欲不振になることがあります。

犬はにおいでご飯が美味しそうかどうかを判断しているので、嗅覚が衰えると判断がにぶり、ご飯に興味を持てなくなってしまいます。

また、シニア犬は消化機能が衰えてくるので、成犬の時と同じフードを同じ量食べさせていると、消化しきれず、消化不良を引き起こします。そのせいで、食欲が無くなってしまうこともあります。

老犬の食欲不振の対策

ご飯を少し温めてから与えましょう。温めることでにおいが立ち、興味を持ちやすくなります。

また、一度に与える餌の量は少なくし、回数を多めに与えることも有効です。もちろん、水分補給はこまめにおこなってくださいね。

食事の工夫で解決しない場合は、ヨーグルトなどで腸内環境を整えることもおすすめです。腸内の善玉菌や消化酵素が増え、消化機能をサポートしてくれますよ。

ヨーグルトは生乳100%で無糖のプレーンヨーグルトにしてくださいね。同じ乳製品でも、牛乳を与えると下痢などの症状が出てしまうので気をつけてください。

ふじわら動物病院 藤原 光宏さん
日本には四季があり、夏は暑くて多湿で冬は寒くて乾燥して、梅雨の時期にはジメジメした日が続きます。特にシニア犬になってくると温度変化、気圧変化、湿度変化の影響を受けやすくなります。気温や気圧が下がると関節が痛くなる犬もいます。痛みによって食欲不振になることもありますので、お天気日記をつけて雨の日や気温が下がると食欲が落ちるなど注意深く観察していただくと傾向が見えてきて、食欲が落ちる前に対策をたてることもできます。

犬の食欲不振、病気が原因の見分け方は?病院に連れて行く必要があるケース

犬 病気

考えられる病気 食欲不振と共にあらわれる症状
消化器系の病気・中毒 下痢、嘔吐、便秘、せき
細菌やウイルスによる感染症 せき、発熱
呼吸器系の病気 餌を飲み込みにくそうにする
泌尿器系の病気 尿が出ない、血尿が出る、普段より水をたくさん飲む
歯周病 歯に異常がある、口臭が強い、よだれの量が多い
フィラリア症 せき、お腹が張っている、呼吸が荒い
がん やせて元気がなくなる

食欲不振だけでなく、上記のような症状があらわれている場合は病気の可能性があります。すぐに動物病院を受診し、適切な処置を受けさせてください。

他にも、上記のような症状以外にチェックした方がいい項目として、

何日間食べていないか
水分を摂っているかどうか

この2点を確認しましょう。

明らかな病気の兆候がなくても、あまりにもフードを食べない場合には注意が必要です。

犬種によっても異なりますが、健康な成犬の場合でも最長で2日間、子犬やシニア犬、成犬でも病弱な子は最長1日間の絶食が限界です。

それ以上食べないようなら、病気の症状がなくてもすぐに病院へ連れていくようにしましょう。

また、水を飲んでいるかどうかもチェックしましょう。

水分を摂らないのは、病気が潜んでいる可能性もありますし、水を飲まないせいで脱水になってしまうことも考えられます。どうしても水分を摂らない場合には、スポイトなどを用いて、水を口まで運んであげましょう。

それから、病院へ連れていってあげてください。

ふじわら動物病院 藤原 光宏さん
犬が自らファスティングをして、体を整えることはありません。1日何も食べず2日目の朝も食べないなら動物病院に行きましょう。犬は人の4倍早く歳を取ると言われています。2日間食べなければ、人では8日間も食べないことになるので、早めに動物病院に連れていくようにしましょう。

愛犬の食欲を失わせないためにすべきことは?

食欲不振になる原因として、病気や老化以外にも食習慣、運動不足や気温・環境の変化などが考えられるとご紹介しました。

なので、それらを予防する方法についてご紹介します。

食習慣を改善しよう

まず、人間の食べ物を与えるのは避けましょう。総合栄養食のドライフードを基本に、その子に合わせて足りない栄養素を補充する程度に、犬が食べてもいい食材を載せてあげるくらいなら大丈夫です。

フードは質の良いものを選んで与えるのが効果的です。食いつきが良く、無添加、良質な食材のものがおすすめです。

また、犬種や犬の年齢、体重などに合わせて、最も適した形、適した量のフードをあげることも大切です。

運動不足にならないようにしよう

運動をしないと消費カロリーが減って食欲が落ちるのもそうですが、運動不足は犬にとってかなりのストレスとなってしまいます。

チワワなど、すごく小さな犬種は、室内の運動だけでもしっかりと運動できればいいのですが、ストレスを溜めないように、外の散歩で気分転換することも大切です。

他の小型犬は、基本的に毎日の散歩が必要ですが、必要な散歩の時間は犬種によって異なります。小型犬は最低1日1回、30分程度はしましょう。

中型犬の場合は、1日2回、1回あたり30分程度の散歩が適しています。元気で体力が有り余っている子は、途中、軽く走ってあげることも大切です。全力疾走をしてもいいですね。

大型犬は、1日に2回、1回あたり30〜60分の散歩が必要です。ゆっくりと時間をかけて長い距離を歩くことが大切です。途中で早歩きをしたり、走ったりして強弱をつけてあげましょう。

特に1歳未満の子は、旧に止まるようなボール投げのような運動は、関節に影響が出ることもあるので注意が必要です。

大型犬に限らず、「運動しすぎ」も犬にとって良くありませんが、「運動不足」もよくありません。どのくらい散歩をすればいいのか不安な方は、病院で「1日にどのくらい散歩させればいいですか」と聞いてみるのもおすすめです。

もうひとつ、散歩の注意点としては、あまり暑い時間に散歩しないということ。犬は地面にかなり近い位置を歩いています。日差しが強い時間帯などは、地面がかなり熱いので、最悪の場合、肉球を火傷してしまうこともあります。

肉球は、かなり治療しにくい部位なので、そうならないように注意しましょう。早朝のまだ涼しい時間帯や、日が落ちてアスファルトの熱がなくなった頃に散歩するのがいいでしょう。

ストレスをかけないようにしよう

人間は「ストレス」と聞くと、人間関係などを思い浮かべる方が多いと思いますが、犬にとってのストレスは、肉体的、環境的な要因が大きいです。

・環境の変化:気温・気圧・温度の変化、部屋が眩しい、臭い、うるさい、引越しをした、家の中に人が増えた、ブルーライトが多い、過剰な紫外線
・自分の状態:空腹、喉が渇いた、疲労、運動不足、病気、かゆみ、痛み、緊張、興奮状態が続く、孤独

など、多くのことが原因で犬の体にはストレスが生じます。人間が快適と感じる環境と、犬が快適と感じる環境は少し異なります。それは、動物としての生態が異なるからです。

たとえば、犬は暗がりで目がきく動物です。そのため、眩しすぎる部屋は犬にとってはストレスになる程、居心地の悪い環境です。

嗅覚も人間より優れているため、芳香剤や香水など、人間にとっては「いい香り」と感じる程度でも、犬にとっては鼻をつんざくような強い臭いである可能性もあります。

また、人間より聴覚も優れているので、テレビや家電などから発される音にも、敏感に反応します。掃除機や洗濯機の音に反応する犬が多いのもそのためです。

他にも、一緒に住んでいる人間同士が喧嘩ばかりしているなど、険悪な雰囲気が漂っていると、犬はそれを察してストレスを感じてしまいます。

ストレスがかかると食欲不振を引き起こすだけでなく、問題行動を起こすようになったり、病気になったりする原因にもなります。

ストレスをかけないために、以下のようなポイントを意識してみてください。

長時間留守番させた後は、帰ってきたらたくさん構ってあげる
食事と水の管理、うんちの状態などを毎日チェックする
適切な時間だけ散歩などの運動をする
犬の寝床やトイレを清潔に保つ
室内を眩しくしすぎない
室内で騒音を立てない
人間同士が喧嘩をしないようにする
室温を快適な温度に保つ

ご飯を美味しく食べて、健康で長生きしてもらうためにも、愛犬にはなるべくストレスを感じずに過ごしてほしいですよね。

ふじわら動物病院 藤原 光宏さん
チワワやトイ・プードルなどの小型犬は、運動不足で筋肉不足のことが多いです。筋肉不足で背筋が少なくなり猫背になったり、後肢の筋肉が少なくなって後肢が弱くなってることがあります。小型犬でも運動をしっかりとして筋肉をつけることは重要なので運動不足には注意してください。

気になるときはすぐに病院へ

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色々対処してみても食欲不振が続くときは病院へ連れていってください。動物は本来、弱みを見せないようにするため、なにか症状が出ているときは既に状態が良くないことも考えられます。長生きしてもらうためには早期発見・早期治療が大切です。

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