犬の乳腺腫瘍とは?乳がんの症状は?悪性だと手術が必要?

犬 睡眠3

愛玩動物看護師
監修者:渡邉鈴子

栃木県生まれ。帝京科学大学にて4年間、動物看護学をはじめとした動物関連の科目を学び、2023年5月には愛玩動物看護師免許を取得。これまでにうさぎや猫の飼育経験あり。現在では、ペット栄養管理士の資格取得に向けて勉強中。


犬の病気にはたくさんの種類がありますが、特にメス犬がなりやすい病気が乳腺腫瘍です。腫瘍には良性と悪性があり、悪性の乳腺腫瘍は乳がんとも呼ばれ、命に関わることもある病気です。

犬の乳腺腫瘍は50%の確率で悪性です。猫では90%が悪性なので、犬と一緒に猫も飼育している方は注意しましょう。

手術をしないと、肺に転移するため亡くなってしまう可能性もあります。

乳腺腫瘍は早期発見すれば、根治することが可能な病気なので、できるだけ早く異常に気づいてあげたいですよね。

この記事では、犬の乳腺腫瘍について、原因や症状、治療法などをまとめました。

 

犬の乳腺腫瘍とは?

犬の乳頭の数には個体差がありますが、左右で5~7対あります。乳腺はこの乳頭に沿って存在する腺で乳汁を分泌する役割を担っています。

乳腺腫瘍はこの乳腺が腫瘍化する病気で、高齢のメス犬によくみられる腫瘍の一つです。

乳腺腫瘍は転移しやすく、初めは近くのリンパ節に、徐々に肺やお腹へと転移していきます。特に脇のリンパや股関節のリンパに転移する可能性があるため注意が必要です。

犬の乳腺腫瘍の原因は?

母犬と子犬

乳腺腫瘍の原因ははっきりとわかっていませんが、女性ホルモンのバランスや遺伝的要因が関係しているのではないかと考えられています。

避妊手術を行うタイミングとの関係も重要で、初めて発情する前に避妊手術を行った場合、2回目の発情以降に避妊手術をした場合よりも発症率が低いといわれています。

また、肥満もリスク要因の一つと考えられており、痩せている犬の方が肥満の犬よりも発生率が低いといわれています。

愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
初回発情前に避妊をすると、乳腺腫瘍の発生率は 0.5%と非常に低い割合になります。

 

犬の乳腺腫瘍の症状は?良性と悪性の見分け方は?

犬が乳腺腫瘍になった場合、乳頭のまわりに硬いしこりがみられます。

視診と触診で、しこりの数や大きさ、硬さや転移の有無などを確認します。大きさや数はさまざまですが、良性のしこりは1cm以下という特徴があります。悪性のしこりの特徴は、3㎝以上と良性のしこりよりやや大きいです。

確定診断は、病理検査を行わないとわからないため精密検査が必要になります。
また、肺への転移がないかどうかを確認するために、レントゲン検査を行います。肺転移は末期症状であり、有効な治療方法はありません。肺に転移をすると呼吸困難を起こし死に至ります。腫瘍が転移していなくても、悪性腫瘍自体が自壊するため、痛みを伴います。

予後は、乳腺腫瘍が5㎝で完全に切除ができた場合良いとされていますが、肺に転移した場合は2か月と短くなります。

愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
乳腺腫瘍でのしこりが見つかった場合、自分だけで判断せず、検査ができる場合は検査を行いましょう。

犬の乳腺腫瘍、治療法は?乳がんだと手術する?

母犬と子犬

乳腺腫瘍のうち悪性の確率は約5割で、悪性のうち転移性が高い確率は約5割といわれています。つまり、乳腺腫瘍のうち約75%が外科手術でしこりを切除することにより治療をしています。

ただし、症状や進行度、病院の方針などによって手術をするかどうかは異なるため、悪性の乳がんと診断された場合は、獣医師と相談しながら、治療方法を検討しましょう。

 

犬の乳腺腫瘍の手術方法は?

手術方法は主に以下4つがあります。

1. しこりがある乳腺のみを切除する
2. しこりがある乳腺とつながりの深い乳腺を取る
3. しこりがある片側すべての乳腺を取る
4. すべての乳腺を取る

切除範囲が広いほど再発する可能性は低くなりますが、麻酔時間が長くなり傷口も大きくなるため、犬の健康状態をふまえて手術方法が選択されます。

手術費用は病院や手術方法によって大きく異なりますが、入院費用も含めて5万円以上かかる場合があります。あらかじめペット保険に入ることで、費用の負担を抑えることができます。うまく活用しましょう。

愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
切除する箇所やしこりの個数によって、手術にかかる費用は大きく変動します。あらかじめペット保険に入ることで費用を抑えることも可能ですのでうまく活用しましょう。

犬の乳腺腫瘍は対策できるの?

犬の乳腺腫瘍は原因がはっきりしていないため、確実に対策できる方法はありませんが、確率を下げるための方法はあります。

初回発情前に避妊手術(卵巣子宮摘出術)を行うと発生率は低くなるため、初回発情前に避妊手術を行うことが望ましいです。

また、肥満にならないように、食事と運動には日頃から気をつけておくことが大切です。

愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
避妊手術は乳腺腫瘍だけではなく、子宮蓄膿症などの病気も予防することができます。発症リスクを抑えるためにも避妊手術はできるだけ行うことが望ましいです。特に乳腺腫瘍では初めての発情前に行うことがポイントです。

犬の乳腺腫瘍は早期発見が大切

犬 病気

犬の胸にしこりがあるかどうかを早期に発見するには、普段からできるだけ多く触れていることが大切です。定期的に触れ合う時間をもち、異変に気づいたら、早めに動物病院を受診してください。乳腺腫瘍は病理検査に出さなければ良性か悪性か判断できませんので放置することはやめましょう。

しこりが小さなうちに切除できれば、悪性であっても転移を防げることもあるため、日頃のスキンシップから愛犬の状態を把握しておくようにしましょう。

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